「気づくと肩が前に丸まる」「胸を張っても、すぐ戻る」。デスクワークの方から特に多い相談です。ネットでよく見る答えは「原因は肩甲骨、肩甲骨を動かそう」。ここまでは正しいのですが、実は半歩浅い。巻き肩の相談で、32項目のうち私たちが[[最初に見るのは肩でも肩甲骨でもありません]]。この記事では、その順番の話をします。
巻き肩とは、そもそもどういう状態か
巻き肩は、肩が本来の位置より前に出て、内側に巻き込まれた状態を指します。多くの場合、腕や胸そのものの問題ではなく、肩甲骨が外側へ滑って前傾していることが背景にあります。
だから、胸を張って肩を後ろに引いても、肩甲骨の位置と動きが変わらなければ、力を抜いた瞬間に元へ戻ります。意識で保つ姿勢は長続きしないのはこのためです。

「胸を張れば直る」ではない──ここまでは、よく言われる通り
「姿勢を正す=胸を張る」と思われがちですが、胸を張る動きは腰を反らせて代償されやすく、肩甲骨そのものは動いていないことが多いです。見た目が整っても、肩まわりの問題は残ります。だから「胸を張るだけでは戻る」。ここまでは、ネットでよく言われる通りで正しいのです。
でも、肩甲骨も「結果」かもしれない──32項目で最初に見る場所
私たちが巻き肩の方の32項目を見るとき、最初にチェックするのは肩でも肩甲骨でもなく、肩甲骨が乗っている「土台」です。肩甲骨は、肋骨(胸郭)の上を滑るように動く骨。土台にあたる胸郭や骨盤が丸まっていれば、肩甲骨だけ後ろに引いても、土台ごと元へ戻ります。
「肩甲骨を動かしましょう」から入ると、土台が丸まったまま肩甲骨だけ頑張ることになり、戻りやすい。順番が逆なのです。
| 見る順 | チェックする場所 | 巻き肩とのつながり |
|---|---|---|
| 1番目 | 呼吸と胸郭(息で肋骨が広がるか) | 胸郭が硬いと、肩甲骨の土台が固まったまま |
| 2番目 | 骨盤・背骨の向き(座って骨盤が倒れないか) | 骨盤が倒れると背中が丸まり、肩甲骨が前へ滑る |
| 3番目 | 肩甲骨そのものの動き | 上の2つが整って初めて、動かす練習が活きる |
なぜデスクワークで巻き肩になりやすいのか
長時間座ってキーボードに手を伸ばす姿勢は、骨盤を後ろに倒し、背中を丸め、肩甲骨を外へ広げたまま固定します。この状態が続くと、胸の前側は縮んで硬くなり、背中側は伸ばされて働きにくくなります。
縮んで硬い前側、伸びて弱い背中側、そして丸まった土台。この3つがそろうと、力を抜いたときの「初期位置」が前へ引き寄せられてしまいます。
何年も『背筋を伸ばして』と言われ続けたのに変わりませんでした。呼吸で肋骨を動かして、座り方から直したら、力を抜いても楽な位置が変わってきたんです。
家でできる、土台から整える3ステップ
ポイントは、肩そのものではなく土台から順に整えることです。次の3ステップは、先ほどの「見る順」に沿っています。
- 1
① 呼吸で胸郭をゆるめる
椅子に浅く座り、鼻から息を吸って、左右の肋骨を横に広げる意識で5〜10回。胸郭が動くと、肩甲骨の土台がゆるみます。
- 2
② 座り方で骨盤を起こす
お尻の下の硬い骨(坐骨)で座面を押す感覚で、骨盤を軽く立てます。背中が自然に伸び、肩甲骨が後ろへ戻りやすくなります。
- 3
③ そのうえで肩甲骨を寄せて下げる
土台が整ったら、肩甲骨を軽く寄せて下げる動きを、反動を使わずゆっくり10回ほど。動かしている場所を意識します。
「肩甲骨はがし」をやれば直りますか?
その場は軽くなりますが、土台(胸郭・骨盤)や日常の座り方が同じなら、戻りやすいのが正直なところです。ゆるめること自体を目的にせず、土台を整えて普段の動きで使えるようにするのが近道です。感じ方には個人差があります。
「使い方」が変われば、戻りにくくなる
ストレッチで一時的にゆるめても、日常の動作が同じなら元へ戻ります。大切なのは、土台から肩甲骨までを正しく動かせる状態をつくり、普段の動きの中で使えるようにすることです。
HELIXでは、初回の32項目の動作アセスメントで、呼吸・胸郭・骨盤・肩甲骨のつながりを確認し、その人に必要な順番でメニューを組みます。原因の土台から変えていくのが、遠回りに見えて近道です。
まとめ
巻き肩は、意識や気合ではなく、肩甲骨と、その土台から見直すのが現実的です。胸を張るのでも、肩甲骨だけを動かすのでもなく、まず呼吸と座り方で土台を整える。順番を変えるだけでも、肩まわりの感覚は変わりやすくなります。
AUTHOR
この記事を書いた人

相馬 拓真
代表トレーナー / NSCA-CSCS・指導歴10年
大学まで陸上短距離の選手として競技を続け、引退後はストレングス&コンディショニング(S&C)コーチとして10年。学生アスリートから40代のデスクワーカーまで、動作を起点にした指導を行ってきました。「感覚ではなく、動作から変える」がHELIXの信条です。


